緑の募金公募事業 街中の森「グリーン・サムズ」育成事業
駅の近くをもっと元気に!―これが、私たち、一般社団法人チカクの設立当初から使い続けているキャッチコピーです。
倉敷駅の北側に隣接していた倉敷チボリ公園の「公益性」を引き継ぐ志をもって、2008年末の閉園直前に設立。その「チカク」なぜ、フォレスト・サポーターズとなり、森林の保全活動の端っこで活動をはじめたのか、特に、倉敷の方は不思議に思われたかもしれません。
設立当初の目標の一つに掲げていた、環境保全とグリーンボランティアの育成。実はこれ、「小さな宝石箱」と比喩された倉敷チボリ公園の緑を守りたいという気持ちから、できることはないかと考えたものでした。
人間の都合に合わせて切り詰めてしまう街の木ではなく、自然に枝を広げた森の木に育てようと、剪定せずに管理し日々慈しんでいたたくさんの樹木が、倉敷チボリ公園の中にはありました。
閉園後、活動の行き先を決めて、少しずつアンテナを広げていく中で、気になるキーワードを拾い上げ、すでに活動されている方のお話を伺いにいきました。そして、今回さまざまな形でご協力いただいた西粟倉・森の学校に向かうことになりました。
命が循環する森と管理されて元気な森
打合せために訪れた西粟倉・森の学校で、担当の坂田さんに、若杉原生林(地元ではこう呼ばれているとか)と百年生のスギの人口林を案内してもらいました。
※写真は昨年10月、今年5月、7月に同地を訪れて撮影したものです。
街に住んでいると、日本の国土の70%が森林であることなど感じる余地もなく、森の学校の近くに原生林があると聞いてもピンと来なかったのですが・・・。
そこで見たのは、自然淘汰であらゆる命が循環して瑞々しさを失わない原生林と、人の手で間伐することによって元気な森林となる人工林でした。
まずは、若杉原生林。植林されていない森の姿を見に行きます。
「ここは日本森林浴100選の天然林。標高1100m、面積83ヘクタールの地に樹齢200~250年の大樹が空を覆い、199種の植物が生い茂っている。吉井川の支流、吉野川の源流地域で、清流にはイワナがおどり、木々には小鳥がさえずっている」と看板にありました。
さっそく、森の学校に植えた「トチノキ」発見。・・・山の谷に生える落葉低木。大木にはクリに似た実がなる。同じ仲間に、パリの並木で有名なマロニエ(セイヨウトチノキ)がある・・・。
セイヨウトチノキはチボリにも植えられていました。チボリ・クーペルのデザインはその実からデザインされていると聞いていましたが、むしろ、つぼみの時が似ています。
苔むした石の隙間を水が流れます。自然の森は間伐しなくても、年老いた木や育たなかった木は自然に倒れ、やがて土に返る。倒れた木をどかしたりしないのだそうです。土壌が豊かな水系の「みなもと」を育んでいます。すべてあるがまま。森の息づくままに。
ブナノキは森にやさしい。一番遅く芽吹いて、一番早く葉を落としていく・・・。そんな話を聞くと大きな木が愛おしく思えました。見上げると空。下草を懐に抱いて、その子たちが育つように、ブナノキが守っているようです。
清流沿いに、森の学校の坂田さんの案内で登っていきます。ブナの木も若葉が展開。ナツツバキの木肌は森林の中にあっても、黄褐色が際立ち、夏に咲く花を見てみたいと思いました。
この付近が源流です、と言われた場所は、とても静かなところで、降り注ぐ雨を受け止めているように見えました。
今度は、植林されたスギの森に向かいます。
植林された森の向こう、明るい森が広がります。そこは、スギを間伐してできた森。
日が差すので、下草が育ってきています。
奥の暗がりが間伐されていない森。
中央は萩の木の幼木。左は、タタラ製鉄の名残。
美しい森林をつくるために
人口林は文字通り、人の手によってつくられた森林です。
植えたままでは自然淘汰が進まず、木々は成長できません。
災害の原因にもなってしまいます。
人工林は人が責任を持って管理をしなければならないのです。
間伐をすると、林内に光が入ります。
木々は成長し、下草が生え、元気な森林へと生まれ変わります。
間伐されて切り出された木材は、製材され、家や家具になります。
こうして、木々は私たちの暮らしの中で生き続けます。木の里 西粟倉村 ~百年の森林構想~
ここ西粟倉村は、人口1600人余りの小さな源流の村。
この村の先人たちは、子や孫のことを思い、懸命に木を植え、育ててきました。
私たちも未来に向け、美しい森林に囲まれた上質な田舎を目指し森林づくりに励んでいます。※原生林入口の看板より引用
いのちがめぐる森へ
駐車場からわずか15分程度で、うっそうとした森の雰囲気。人の手が入ることを、意識して排除している原生林の森。
小さな子どもたちでも、本物の森を体験できる場所です。少し大きくなったお子さんは、スギの人口林との対比で、より一層森の働きについて学ぶことができます。
7月の終わり、小さな子どもたちと一緒に登ることを考えて、森のにおい、音、体温、感触を探りました。
頂上を目指す山登りではなく、足をとめて、耳を澄まし、目を凝らし、においをかいで、手でさわって足で踏みしめて、
西粟倉の「いのちの森」を感じること。自然を学ぶのではなく、瑞々しくいのちが循環する森の中で大きな生命のサイクルの中にある小さな自分を感じること。
たぶんそれは、幼児体験として重要なのではないか・・・。そんな風に感じました。
子どもたちへの一番大切な贈り物は
美しいもの、未知なもの、神秘的なものに
目を見張る感性「センス・オブ・ワンダー」です。
その感性を育むために、子どもたちと一緒に
感覚の全てをかたむけて、自然と触れ合いましょう。※レイチェル・カーソン著「センス・オブ・ワンダー」より引用
若杉原生林には、中国自然歩道および自然研究路(歩道)が整備され、林内散策が楽しめます。今回のツアーですべては確認できませんでしたが、次のような自然学習のための解説板が設置されているようです。
- 自然歩道を利用される皆さんへ
- 若杉ブナ林の構成
- 若杉の自然林
- 若杉の環境
- 若杉の野鳥
- イワナとアマゴ
- 若杉の清流
- つる植物
- ブナ林の景観
- 落ち葉のゆくえ
- ブナの大木
- ブナとスギ
- カエデ
- 若杉の湿性植物
- 若杉峠と地蔵尊
- 自然保護憲章
- 中国自然歩道の整備
- 天然林と動物たち
▲ワークシートを印刷して森を探検しよう!▲
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